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第4章 第5話 サハリン |
頂いたシャンパンも飲み干し、機内で配られた軽食も食べ終わった頃、窓の下には夕陽にそまる原野と湿地が少しづつ近付いて来た。飛行機はどんどん高度を下げる。 ドン 鈍い音と共に急な減速。 ユジノサハリンスクの空港に着陸したのは8時半頃だった。 タラップを下って滑走路に降り立つと、そのまま歩いて柵から外へ出る。ずいぶんと最後はあっけない。 陽の沈んだ道をガタガタ走る。遠くに低い山々が連なっているのが僅かに見える。木造の小屋が沿道に散らばる。北海道と似た風景が広がるが、看板の文字や行き交う人々はまさしくロシアだ。 ほんの数十年前、私達のおじいさんの時代には『樺太』と呼ばれていたこの場所。今、私が通っているこの道も、かつては多くの日本人が通っていたのだろう。 日本としての可能性をもちながらも別の国として今に繋がるこの土地。いろんな事が頭をよぎりながら、ホテルへと着いたのは午後10時をまわっていた。 つづく
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